ピエールSの戯言

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デマを調べない人

今日は思ったより用事が長引いてしまった。

なので、本を復習する時間が取れなかった。

ということなので今日は流行のデマについて持論を述べていきたい。

 

 

デマの歴史

情報に踊らされるのは現代に限った話ではない。

関東大震災の井戸水に毒が~というデマ、ノストラダムスの大予言、3.11時に動物園からライオンが逃げた、オイルショック時のトイレットペーパー不足などなど。

人間が天災や経済的に難しい局面にはだいたいデマが出回る。

ただ今までと違い、現代のデマというのはSNS上で素早く拡散されてしまう。

ちょっとした呟きでも、RT等でたちまち拡散され、当然発信者が全くの知らない人でもすぐに目に入る。

現に、今回のコロナウイルスでもマスクの買い占めが行われた結果、これに便乗してマスクの材料であるトイレットペーパーやティッシュペーパー不足が発生するというデマが発生し、メーカーに在庫があるにもかかわらず、たちまちスーパーからトイレットペーパーが消えた。

 

恐らくこういったデマの元を調べない多くの人は、こういう情報を反射的に取り込んだ結果、日常とは全く異なる現状に狼狽し、買い占めなどの行動に即座に移してしまうのではないかと、個人的に勝手に思っている。

 

 

環境適応

社会学者の清水幾太郎(1907~1988)氏は『流言蜚語』の中でデマについて述べている。*1

氏によると、動物が環境に適応して生きるように、人間も自らが置かれた環境に適応して生きなければならない。しかし、動物は本能的に環境に適応できるが、人間は本能よりも知性を用いて情報収集を行い、環境に適応していく

平常時では問題なく提供されるであろう情報が、今回のような天災といった非常事態のことが発生すると環境が激変し、情報伝達手段がマヒする。すると情報収集もスムーズにいかなくなり、環境への適応が難しくなる。このような、”情報”が強制的に限られると、人間は情報に対して【飢え】を感じるようになるだろう。この情報に対する【飢え】がデマを拡散する基礎となる

というように述べている。

 

確かに、わからなくない。

つまり危機的な状態でもあるにもかかわらず、それに関する情報が一切来ず、唯一来た情報がデマだった場合、それに対する整合性などを確認しようと考える前に、その【飢え】の一部が満たされたことで即座に拡散してしまうのだろう。

 

 

イメージの変化

また、人間は自己と環境との関係について、何らかのイメージを持つことで生活できる。

しかし突然の変化と情報の枯渇に見舞われることで、従来のイメージとは大きく異なることを理解し、そのイメージは崩壊する

この結果、新たなイメージを作り出そうとするが情報が制限されている現状ではとても難しい。しかし、その時は分からなくとも【デマ】という”情報”が一番に入った結果、これに食いついてしまう。そして、善意からこの拡散を行ってしまう。

これは疑心暗鬼になって無実の人をあたかも罪人のように扱ってしまう、という状態と似ている。

つまり、情報への飢えと従来のイメージの崩壊という2つが組み合わさった結果、デマが拡散するための条件がそろってしまうのだ。

 

 

メディアや政治

また、正規の報道への信頼が揺らいでいる場合にもデマは強力になる。

正規の報道というのはニュース番組などのメディアのことである。

デマは出どころがわからなければ、正確に誰が発信したのかすらわからない。もしこれが、正規報道が真実だと考えられている場合であれば、そのデマは嘘である、とわかる。

しかし、メディアへの信頼度が低下している現在*2、さらに政治家への信頼度が低い現状*3、ではデマは強力になるそうだ。

 

確かに、信頼できる情報や報道がなければデマをデマとして受けるのではなく、真実として受け入れてしまうことがあるのかもしれない。

 

 

人災

このデマが本当に文字だけで済めば、それは想像上の物語として済む。

しかし、これが現実に実行されてしまうと経済的な問題や人間関係を乱すことにつながりかねない。

例えば今回のトイレットペーパー不足では、現に多くのスーパーから在庫が消え、売り切れの表示が出される。

マスクのように需要過多な状態での供給不足による在庫不足とは違い、正常に稼働し計画的にスーパーなどに供給されているはずのものが一時的に需要過多になると、地域ごとに差が出てしまい、供給バランスが乱れてしまう。

これによりある地域では供給されているのに、ある地域では大幅不足になったりする。

現に、静岡のある都市ではトイレットペーパーは通常に供給されているのに、都内になると不足になっていたりする場合もあった。

このように、たった一人のSNSからの発信が、想像以上の反響を呼び天災並みの問題になる。

 

結論と対処方法

以上のことを合わせると、デマが流れやすい状況というのは、

情報の飢え+イメージの崩壊+メディアや政治への疑心

という条件が揃う場合ということがわかる。

それにより、デマを信じてしまう人が増加し、一時的な~不足という結果に陥る。

あまりにも酷くデマが続いてしまうと、経済用語でいう共有地の悲劇を引き起こしかねないと個人的に思う。

共有地の悲劇》とはギャレット・ハーディンによって提唱されたもので、共有資源に対し、管理がうまくいっていないと過剰摂取が発生し、資源が劣化してしまう、という現象である。

つまり、最終的にデマに惑わされた人だけでなく、惑わされていない人も含めた全員にデマの影響が及んでしまう、と考えられる。

SNSは情報収集にはとても便利である。しかしその便利さ故、デマなどの嘘情報も簡単に手に入る。

そのデマに対して、特にこういった緊急時には、本当かどうかを今一度、インターネット上で調べ、根拠を確認した上で情報を共有しなければならない。

デマが嘘であること、真実が真実であること、そして、真実がデマに埋もれないようにするためにも、”ググる”といったもう一歩調べる行動が重要なのではないかと思う。