手順書(マニュアル)の重要性
職場において運用方法や運営方法をしばしば見直すことは、無駄を省くことに貢献し、結果的にコストダウンにつながることが多い。
またそれだけでなく、新しい方法を見つけ出し、より効果的な生産性をもたらす可能性もある。
これらの理由から、方法の見直し、すなわち『改善』は必要だとされている。
この改善は、1900年代から1910年代のアメリカのフォード生産方式が由来で、トヨタ生産方式により有名になっていった。
トヨタ生産方式によると、『標準作業』を定めることで改善がなされる。
つまり標準作業がなければ、なにも進まないのである。
この標準化にはルールがある。
それは以下の通りである。
1.標準を決める
2.その標準を作業者に守らせる
3.作業者が標準作業を守っているか観察する
4.標準と異なる動きをしている作業者を見出し、ムリ・ムラ・ムダを発見し、これを改善させる
以上がこの標準化のルールである。
では、この標準化に必要なものが何であろうか。
それこそが【手順書】である。
この手順書が基礎となり、基準となることで業務の全体がクリアになる。
また、それだけでなく、新入社員の説明時にも用いることが可能で、時間短縮につながる。
手順書を作成することで、
1.業務全体を見渡せる
2.担当していた業務に無駄があるのか、否か
3.教材として新人に伝えられる
ということ、もしくはそれ以上のことが可能になる。
具体的にどのようなことが可能になるのか、詳しく見ていきたい。
1.業務全体を見渡せる
これは、手順書を作成するうえでも重要なことである。
つまり、業務に連続性があり、どこでどの部署が関連しているか、その時の対応はどのようにしていたのか、といったことがわかるようになる。
これにより、例えばA作業が終了したら次に何をするのか、関連部署に連絡が必要か、手配しなければならないものがなにか、ということがわかる。
2.担当していた業務に無駄があるのか、否か
では、手順書が完成したいとして、いざ自分の担当業務を見てみる。
今までしていた実際の業務と手順書の業務には乖離があるだろうか、ないだろうか。
A作業後に今までは関連部署に対して連絡をしていたが、実はその作業はいらないものではなかったのではないか、今までは時間間隔を置いて手配をしていたが、作業終了後に連絡しても問題ないのではないか。
といった具合に見直しができ、より効率的な判断が可能になる。
3.教材として新人に伝えられる
以上のことを経て作られた手順書は洗練された、特別な手順書となり、ムリ・ムラ・ムダが排除されたものになる。
これらを新人の説明に用いることで、効率的に、そして洗練されたものとして、説明することができる。
今までは口頭で、新しい作業が発生するそのたびに先輩や上司が説明に入り、新人のみならず先輩や上司の作業までもが妨げられてしまう。
これにより、不必要な損失が発生してしまう。
これを排除するためにも手順書は必要であり、さらに効率的な教材としても用いることが可能である。
もし仮に、この教える行動が新人とのコミュニケーションの一つである。故に手順書は作らない。という会社があればそれはそれで良いかと思うが、そんなことでしかコミュニケーションをとれない会社はどうなのでしょうか?
手順書の作成方法
いくら手順書が大事大事といったところで、どのように手順書を作成すればいいのか。
これだけのメリットがありますが、この作成が一番面倒で、時間が掛かります。この理由から作成しないケースが多いのではないでしょうか。
ここでは、あくまで私流の作成方法を記しておきます。
もし他の方法があり、その方が簡単で早いというならそちらをお勧めします。
〔使用するもの〕
まず使用するものとして、PowerPoint(以下PP) もしくはExcel といった(会社向けPCでは)標準のものを使います。
各シートにフォーマットを定め、例えば、PPには作業の流れ図を記し、Excelには作業の説明を写真とともに載せる、といった具合に大まかに決めます。
PPは一枚一枚に余白の限りがありますが、Excelにはその決まりがありません。そのため、図や写真という比較的大きなスペースを消費するものはExcelの方が良いのではないかなと考えています。
写真を説明に用いるのも重要で、一見ですぐわかるようにするのも時短につながります。
流れ図というのは、以下のような感じです。
(例)
実作業 補足
作業A |項目Xに空欄がないか確認
↓ |
作業B |システムKにエラーが排出されていないか確認
↓ |
登録作業→終了 |登録エラーがなければ終了
↓エラー発生の場合 |エラーがあれば、システムAの項目Yを確認
システムAの確認 |
以上のように、作業を端的な言葉で表し、矢印、Yes/Noなどを用いて流れ図を作ります。
あまり長々しく言葉をしても見にくいため、ある程度スペースが制限されているPPのほうが綺麗にまとまるかと思います。
残りの余白スペースには簡単な説明を補足として記入しておくとさらに分かりやすくなるかと思います。
〔期間〕
では、どのくらいの期間にすればよいか。
これは担当している作業にもよりますが、始まりから最後まで、例えば製造業でいえば、受注から発注までの期間分を一区切りとすべきです。
それでなければ、業務に連続性がとれていないからです。
一番面倒で大変な場面ではありますが、ここを耐えればシステムの大きな変更がない限り半永久的に用いることができます。
また、マイナーチェンジであればその部分を修正するだけで済みますので、時間を割く必要性がありません。
以上になります。
手順書は簡単そうで、結構難しいですが、一方でそれがもたらす生産性の向上は計り知れません。もしかしたら業務改革にもつながるかもしれません。
私は2社経験しましたが、1社はそもそも新しいPJ下だったため、手順書がなく、0から作成しました。もう1社は、長年業務を見直さず、時代遅れのスタイルでありましたが、作成したことにより、案件契約確率が5倍になりました。
ぜひ、以上のことを踏まえて作成してみてはいかがでしょうか。